葛明祥 海鼠釉 双耳壺 高さ30㌢のご紹介です。
一目で「景色を抱えた壺だな」と感じさせるのが、この葛明祥による海鼠釉双耳壺です。高さ30センチという程よい堂々さに、海鼠釉ならではの奥行きある青褐色が重なり、静かな存在感を放っています。
まず注目したいのは、表情豊かな釉肌です。海鼠釉は、艶のある青みと茶褐色が混ざり合い、まるで夜空や深海のような揺らぎを見せます。この壺では、その釉の流れと滲みが全面に広がり、光の当たり方で青が立ち、茶が沈み、実に表情が変わります。単なる「色」ではなく、「景色」として楽しめるのが魅力です。
左右に付いた双耳も見どころです。装飾としての面白さだけでなく、壺全体の重心をきりっと引き締め、胴のふくらみをより端正に見せています。耳の造形はどこか獣の面影もあり、器に少しだけ緊張感を与えているのがまた良いところです。
葛明祥の作品は、伝統的な中国陶芸の気品と、現代的な造形感覚がうまく同居しているのが持ち味。この壺もまさにその好例で、飾れば空間に深い陰影を与え、床の間はもちろん、モダンな室内にも不思議とよく馴染みます。
花を活けてもよし、空壺のまま眺めてもよし。むしろ何も入れず、釉の景色そのものを楽しむのが贅沢かもしれません。手元に置くと、日々の景色が少し落ち着いて見えてくる、そんな器です。
骨董店の目から見ても、この海鼠釉双耳壺は「派手さ」より「深み」で魅せる一品。じっくり付き合うほど味わいが増す、実に奥ゆかしい名品です。
