この三毛の招き猫、なんとも愛嬌がありますね。素朴ながらもどこか穏やかな表情、そして右手をゆったりと上げたその姿 ― 古き良き日本の商家や料亭の店先を思い起こさせます。大正期らしい彩色と柔らかな造形に、時代の温かみがしっかりと漂っています。
まず目に留まるのは、首に巻かれた色鮮やかな襟飾り。金彩と赤絵の華やかな絵付けがほどこされ、三毛模様の黒・茶・白のコントラストをより引き立てています。どっしりした体躯ややや丸みを帯びた顔立ちも、この時代特有のやわらかな作風。明治よりもおおらかで、昭和初期よりも風情があり、まさに“大正ロマン”の香りを感じさせる一体です。
この招き猫は、右手を上げていますので「金運」「商売繁盛」の象徴。古来より日本では、右手は富を招き、左手は人を招くといわれています。表情の素朴さと色絵の華やかさが調和し、福を呼び込む姿としても非常に縁起が良いものです。
経年による貫入やわずかな擦れもまた味わいを深め、百年を超える年月の重みが感じられます。現代のインテリアにも自然に調和し、飾るだけで場がふっと明るくなる不思議な力を持った作品です。
この大正期の招き三毛猫は“時代の温もり”そのもの。可愛らしさと歴史が同居する、心癒される逸品です。どうぞ、幸運を招くそのまなざしを、じっくりとご覧ください。