まず、この花瓶の美しいフォルムにご注目ください。しなやかに伸びた首元――その形から“鶴首”と呼ばれるこの意匠は、日本の伝統的な花入れの中でも特に気品ある佇まいです。どっしりと丸みを帯びた胴から、きゅっと繊細に伸び上がる首へと続くバランスは、どこか静謐で端正な趣があります。
そして、ガラス地に美しく表現された鉄線(クレマチス)の花と蔓。この凛とした青紫色の花は、一点一点手間をかけて彫り・色ガラスで重ね描きされたもの。緑の葉や茎は立体的に浮き上がるように施され、植物の瑞々しさや静かな生命力までもが伝わってきます。ガラスならではの透明感と、淡く霞がかったような色合い――まるで初夏の朝露に濡れた鉄線そのものを観ているかのようです。
松本正雄氏は、自然の息吹をそのままガラスに映し取る現代工芸作家として名高く、この作品にも作家ならではの研ぎ澄まされた美意識と技法が集約されています。
空間に一輪、季節の花を活ければ、まるで日本庭園のような世界が広がります。飾っておくだけで、室内がしっとりとした上質な雰囲気に包まれることでしょう。
骨董好きの私から見ても、「鉄線鶴首」ガラス花瓶は、伝統と現代美の融合を極めた逸品。作品のもつ静けさと凛々しさに、ぜひじっくりと触れてみてください。気になる点やご質問があれば、どうぞ遠慮なくお声がけくださいませ!