こちらは、髙山辰雄による版画作品で、静けさの中に人物の気配をすっと浮かび上がらせる、たいへん品のある一枚です。細い線だけで構成された画面なのに、人物たちの距離感や空気まで伝わってくるのが魅力ですね。
髙山辰雄は、写実を追いかけるというより、人の存在そのものの気配を見つめる画家として知られます。この版画もまさにその持ち味がよく出ていて、派手な色や強い構図に頼らず、線の呼吸だけで静かなドラマをつくっています。
中央に寄り添うように立つ人物群は、華やかな場面というより、どこか祈りや沈思を思わせる雰囲気があります。顔や衣の輪郭は簡潔ですが、その簡潔さがかえって余韻を生み、見る人それぞれに物語を想像させてくれます。
額装も落ち着いた金縁で、作品の繊細さをきれいに引き立てています。壁に掛けると空間がすっと整い、和室にも洋室にも自然になじむタイプの作品です。
骨董店の目で見ると、この版画は大きく主張する作品ではありませんが、長く付き合うほど味わいが増す、まさに髙山辰雄らしい上質さがあります。
