この圧倒的な存在感。三体の獅子が渦を巻くように絡み合った造形は、まるで力と守護のエネルギーがひとつに結ばれたかのよう。平佐焼特有の豊かな釉薬表現が生きており、紫や水色、黄の発色が絶妙なバランスで溶け合っています。まさに、彩りと躍動の見事な融合です。
薩摩平佐焼は、温泉地・出水の平佐村で江戸後期に栄えた焼物で、薩摩焼の中でも特に自由闊達な造形と鮮やかな色絵で知られます。この三つ巴獅子も、その精神を存分に表した逸品。曲線で構成された渦巻き文や、毛並みを思わせる線彫りの見事さは、職人の緻密な手仕事の証といえます。
三体それぞれの表情も実に個性的です。一体は威厳に満ち、もう一体は戯れ、さらにもう一体は守護を誓うような穏やかな顔つき。三つ巴の構図は古来より「調和」「循環」「永遠」を象徴し、魔除けや家運隆盛の願いを込めた意匠として珍重されてきました。
この置物は、ただの装飾ではなく、空間に力を宿す存在。和室や床の間はもちろん、洋間のインテリアとしても圧倒的な存在感を放ちます。時代の風格と遊び心が同居した、まさに“薩摩の粋”を体現する一点です。
骨董好きの私から申し上げても、これは重厚でありながらどこか愛嬌のある名品。ぜひ間近でその釉の艶、造形のリズム、そして三獅子の物語を感じていただきたいと思います。