前回はサトちゃんのノスタルジーや佇まいをお話ししましたが、こちらの「サトコちゃん」は、また少し違う視点からじっくりお話ししたくなる逸品です。
まず歴史の面白さから触れますと、昭和34年に生まれたお兄ちゃんのサトちゃんに対し、この妹のサトコちゃんが登場したのは昭和57年(1982年)のことでした。実に20年以上もの歳月を経て仲間入りしたわけですが、ここには高度経済成長期のたくましさから、80年代の「ファンシー」「カワイイ」カルチャーへの時代の移り変わりが、見事に映し出されているように感じます。台座の「HEALTHCARE INNOVATION」の文字からも、昭和から平成へと移るなかで、医療や薬局がより親しみやすく優しい存在へと変化していった歩みがうかがえます。
そして、お兄ちゃんとの造形の対比が実に素晴らしいのです。ただ色をピンクにしただけではなく、くりっとした瞳の端には愛らしい3本のまつ毛が描かれ、頭のてっぺんには可憐なリボンがあしらわれています。何より面白いのがその立ち姿でして、肘を張って元気いっぱいに胸を張るサトちゃんに対して、サトコちゃんは両手をすっと体の横に下ろした、どこかお行儀のよい楚々としたポーズをとっています。この動と静の対比が、見るほどに微笑ましく、キャラクターとしての個性を際立たせています。
骨董・ヴィンテージの視点から見ると、実はこのサトコちゃん、お兄ちゃんであるサトちゃん人形よりも遥かに出会うのが難しい「希少品」でもあります。全国の薬局に長年配備され続けたサトちゃんに比べて、登場が遅いサトコちゃんはもともとの作られた絶対数がぐっと少ないのです。店頭の過酷な環境をくぐり抜け、これだけ愛らしい表情と色合いをとどめて現代に残っていること自体、とても幸運なことだと言えます。
単体で置いても80年代らしいポップな華やぎを放ってくれますが、やはり店主の本音を言えば、サトちゃんと並べて“一対”で飾っていただきたい。元気な兄とおしとやかな妹、ふたつ揃って並んだときの懐かしくも温かい空気感は、ほかのアンティークでは決して味わえない格別の魅力があります。時代を映す生き証人としても、空間をパッと明るくする名脇役としても、実に手元に置く価値のある一体です。
