この二客が放つ“格”の高さに注目です。冨貴長春とは「富み栄え、長く春のごとく繁栄する」という吉祥語で、その名の通り、松竹梅や牡丹、宝尽くしなど、福徳長寿を象徴するモチーフがびっしりと描き込まれています。色絵の赤・緑・群青に細かな金彩が重なり、祝宴の席をそのまま器に移したような豪華さです。
形は口縁が大きく開いたたっぷりとした鉢で、見込み(底)の余白をうまく活かしつつ、立ち上がりから外側まで文様が切れ目なく続く構成。料理を盛った時、ちょうど具材の周囲に吉祥画がぐるりと立ち上がるように見える、よく計算された設計です。煮物鉢としてはもちろん、舟盛りやちらし寿司、大皿料理にも映えるサイズ感で、現代の食卓でも“主役級”として活躍してくれます。
赤絵古伊万里の中でも、ここまで密度の高い総絵付けの鉢がペアで残っているのはなかなかの幸運です。本来、婚礼道具や格式ある家の晴れの日の器として誂えられた可能性が高く、二客揃いで並べると、左右対称に近いバランスで絵柄が響き合い、空間そのものが「祝の間」に変わります。
骨董として見れば、単品の器以上に“物語”を感じさせるところが魅力です。江戸のある座敷で、祝いの膳を支え続けてきたであろう大鉢が、今また令和の食卓で華を添える――そんな時間を越えたリレーのような楽しみ方ができる一対と言えます。
晴れの席にぜひ、この冨貴長春赤絵大鉢ペアを。盛り付ける料理まで、自然と少し背筋が伸びる、格調と華やぎを備えた逸品です。
