この大壷は、朝鮮王朝(李朝)後期に焼かれたもので、質朴で力強い美を持つ李朝陶磁の真髄を体現した逸品です。堂々たる胴張りのフォルム――素朴ながら、どこか静謐な存在感を感じます。手に取ると、重量感とともに歴史の厚みさえ伝わってくるようです。
胴に大胆に描かれた鉄絵の草花文様。鉄釉独特の深い茶褐色が、白磁に生き生きと映えています。筆の勢いそのままに描かれた花と葉は、写実というよりも“生命の象徴”としての意匠。李朝陶磁の自由な美意識、作り手の素直な心が感じられる逸品です。
この大壷には、所々に見られる釉薬のムラや、小さな窯傷も――それがまた、李朝陶器ならではの自然体の魅力。計算され尽くした西洋陶磁とは一線を画す、民藝の力強さと温かさがあります。
李朝の大壷は、米や水、穀物を貯蔵するために使われる実用品でありながら、王宮や上流階級の雅な室内装飾としても珍重されました。現代でも、和の空間はもちろん、ナチュラルモダンなインテリアでも抜群の相性を誇ります。
骨董好きの私から言わせていただくと、この鉄絵草花文大壷は「使う美術」そのもの。静かな風格と手仕事の温もりに、ぜひ一度触れてみてください。李朝の美を伝える逸品です。